朝晩めっきり涼しくなり、秋の夜長を楽しみながら、暖かいお風呂にゆっくりつかって1日の疲れを癒す。
いいですねえ、これ。ぼくもみなさんに、‘疲れたときは、シャワーではなく、ゆっくり湯船につかってますか?’って聞きますよね。では、なぜお風呂につかるのがいいのか?

まずは『水圧の効果』についてご紹介します。
海のダイビングでは、水面から10メートル潜るごとに1気圧ずつ水圧が増えていくそうです。で、なんと、この水圧が、深さ1メートルにも満たない浴槽でも立派にかかっており、お風呂位の水深でも、全身で合計すると1トン以上の圧力を受けているのです。では、この水圧を受けると体はどう変化するのでしょうか?

外圧を受けた体は、その分押し縮められます。その結果、脚で1.5cm、バストで2~3cm、肋骨のガードがないウエストでは3~5cmも細くなります。そして、水圧はチューブのようなつくりをしている血管にダイレクトに影響します。

なかでも、下半身の静脈に対する影響は、とりわけ大きいようです。丈夫な筋肉の層に包まれた動脈と違い、静脈の壁は薄くて伸縮性に富み、圧力に反応しやすい性質があります。しかも、下半身の静脈には重力で血液がたくさん集まっていて、ちょうど血液でタプタプになった袋がある感じです。そこに、水圧がかかると血液はギュッと袋から押し出され、心臓めがけて駆け上がります。

心臓の血液の容量は130mlほど増えますが、この増加分のほとんどは下半身にうっ血していた血液が還流したものなのです。大量の静脈血を受取った心臓は、それを肺に送ってリフレッシュしたあと、動脈へどんどん送り出します。こうして、血液の循環は活発になり、同じ理屈でリンパ液の流れも良くなり、あわせて全身の新陳代謝は盛んになるというわけです。

理想はみぞおちまでつかる半身浴。よく『肩までつかって』といいますが、全身の血液を集めすぎるので心臓に余分な負担をかけてしまいます。でも、肩が凝ってしかたない人は、肩までざんぶりつかったほうが、ぼくはいいと思います。

次に『浮力』についてです。
水中では身体が軽くなる。誰でも気づいていたこの事実をきちんと法則化したのは、紀元前3世紀のギリシャ人アルキメデスです。『液体中に沈んだ物体は、その体積と同量の液体の重さだけ軽くなる』というアルキメデスの原理です。彼はこの法則をお風呂に入ってひらめいたというエピソードがあります。

ところで、この原理に従って、例えば体重60kgの人がお湯に首までつかった場合を計算してみると、首から下はなんと2㎏ほどの重さしかなくなるのです。頭の重さは体重の約7%とされているので4.2kgとして全体重は6㎏強ということになります。なんと空気中の10分の1という軽さなのです。

この浮力の恩恵を受けるのは、他でもない身体を支える筋肉なのです。どれだけリラックスしていても筋肉のどこかは緊張しているものなのです。中でも、太もも、お尻、腰回りの筋肉は抗重力筋といわれ身体を支える役目をしています。しかし、水中ではその労力の大半を肩代わりしてくれます。そのおかげで筋肉の緊張はほぐれ、ホッとした気分になるのです。

筋肉が弛むと周囲の毛細血管の流れが良くなり、溜まった老廃物も素早く排出されます。また、少ない力で筋肉や関節が動くので、コリをほぐす効果もあります。スポーツ選手がプールでリハビリを行うのはこのためです。

最後は『温熱の作用』です。
こちらの方は自律神経に働きかけます。自律神経というのは、体温調節や呼吸ホルモンや内臓の働きなどをつかさどっていて、交感神経(活動しているとき優位)と副交感神経(休息しているとき優位)の2回線があります。

お風呂の温度が熱すぎると皮膚をピリピリ刺激し、その防御のため交感神経優位となり、とてもリラックスどころではありません。37~39℃という体温より少し温かいお湯なら刺激も少なく、副交感神経優位となりリラックスできます。以上、お風呂の研究でした。