前回は食いしん坊の身として「食欲の秋」を取り上げたが、今回は仕方なしに「スポーツの秋」を取り上げよう。これを書いているのは10月の末なので秋本番でスポーツに最高の季節だが、11月の末にこれを読む人にとっては「こんな寒い時期になーにがスポーツだあ。バーロー!」と憤慨されるかもしれませんが、まあそのへんはご勘弁くださいまし。

では、なぜ、‘仕方なし’と、こうもイヤイヤなのかというと、いつも「健康のために適度な運動をしましょう」ともっともらしいことを言っているが、ぶっちゃけた話、ぼくも普段あまり運動などしていないのである。口でいうのは簡単だが実際できないのは事実である。

でも、こう見えても高校時代は陸上部に所属していて、短距離ランナーとして毎日練習に励んでいた・・・。かというと、そうではなく、砂場でプロレスごっこばっかりしていて、たいした記録も出せないダメ部員であった。だが、己の体を鍛える、筋肉をつけるということに関してはかなり必死だったかもしれない。

とはいうものの、中学時代はまだそういうことには目覚めておらず、小柄で内気で弱々しかったためかよくいじめられもした。あのころの時代はプロレス全盛の時代(力道山の次の時代です)で、馬場や猪木や鶴田や大木やデストロイヤーやブッチャーが‘四角いジャングル’で活躍していた。

当時、ぼくはメキシコの英雄で‘千の顔を持つ男’といわれた覆面レスラーのミル・マス・カラスの大ファンでファンクラブにもはいっていたほどの熱の入れようだった。蝶のように華麗に飛び、多彩に仕掛ける技が素晴らしかった。

メキシコのレスラーは小柄な人が多く、マス・カラスも例外ではなかった。だが、彼の素晴らしさはその見事に鍛え上げられた筋肉美にあった。ぼくもそこに眼をつけた。いくら小柄でもガッシリしていれば見劣りはせぬであろう、もうからかわれたりしないであろうと、毎日腹筋、腕立てふせなどあらゆる筋トレを続けた。

ちょうど、高1のとき、「ロッキー」という映画が公開され大ヒットした。町のチンピラにすぎなかったへなちょこボクサーであるシルベスター・スタローン扮するロッキー・バルボアが、愛するエイドリアンのため毎日体を鍛えていき、最後にアポロとのチャンピオン戦となり、試合終了のゴングが鳴るまで闘い続けたというサクセスストーリーだった。

彼が早朝、眠たい目をこすりながら生卵を4つか5つグラスに割り、それをゴクゴクとやり、フィラデルフィアの朝もやの中をジョギングするシーンがあった。ぼくも真似してグビグビやったが、気持ち悪かった。醤油を少しポタポタたらすとおいしくなり、朝焼けの光の中、大阪城へ向かって走っていった。

「タクシードライバー」という映画ではロバート・デ・ニーロがちょっと変わった腕立てふせをやっていたので、それも真似した。もちろん、「ロッキー」の片手腕立てふせも毎日何十回もやった。そうこうしているうちにぼくの体はかなり鍛え上げられていった。高3のとき、担任の先生にいたってはぼくのことをてっきり体操部員だと思っていたらしい。それぐらい‘逆三角形’でムキムキのカラダだった。(でも、今は・・・)

このように体というのは鍛えれば鍛えるほど強くなり、筋肉も発達していきます。これは、年齢に関係しません。60代であっても、70代であっても筋力はついていきます。ですからみなさん今からでも遅くはないのです。

ただ、ここで気になるのが‘筋肉痛’です。久しぶりに張り切って体を動かすと3日ほどこれに悩まされ、もう運動はイヤ!ということになり、結局あとが続かないのです。で、前回はKOKUA解剖学教室で‘筋疲労の原因’を取り上げましたが今回は‘筋肉痛’そのものに関して勉強することにしましょう。