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海と山に挟まれた港町、神戸。
海上のクルーズ船のデッキから眺めると
また格別であった。
2009.12月撮





プロ野球もキャンプインして、各チーム、いよいよペナントレースのスタートである。今年は寅年なので我が阪神タイガースには是非優勝めざして頑張ってもらいたい。しかし、コクアには他府県ご出身の方も大勢いらしゃり、それぞれご贔屓のチームがあると思うので、タイガースばかりも言ってられない。そして、今年は冬季オリンピックがあったり、サッカーワールドカップがあったりと野球以外のスポーツも多い年でもある。

ところで、一般人でも、今、マラソンがブームだという。各地の市民マラソン大会はいつも大盛況らしい。同年齢の友人も10キロくらいのマラソンには出ているようだ。

さて、マラソンやジョギングなど走ることは苦手な方でも歩くぐらいならできるでしょう。朝など川べりに行くとたくさんの方がウォーキングをされている。ただ、ウォーキングとなると、腕を大きく振れだの、背筋を伸ばして早歩きしろだのと、結構うるさい。1日何千歩歩けだの、毎日最低何分歩けだのと何かと注文が多い。

だいたい、いつから「ウォーキング」などと横文字で言うようになったのか。日本人なんだから「散歩」でいいのではないか。それに、「よし、明日からウォーキングを始めよう」と思っても、「トレーニングウェアをそろえないといけないかなあ、シューズも専用の軽いものがいいのかなあ」、なーんてなかなか外へ出ることができない。

これが、散歩だったら気が楽である。「かあちゃん、ちょっくら、散歩いってくるからな」と普段着のままでサンダルをひかっけひょいと表へ、と簡単である。

そもそも、「散歩」の語源ですが、古代中国で当時「五石散(ごせきさん)」という今でいう麻薬・ドラッグみたいなものが流行っていた。5種類の石(鉱物)から作られたものらしい。「散」は「龍角散」や「太田胃散」の「散」と同じで「こなぐすり」という意味。これを飲むとハイテンションになるわけだが、この状態を「散発」と呼び、もし、この「散発」が起こらず、体内にクスリがこもったままだと死ぬらしい。従って、このクスリを飲んだら、そうならないように歩き回らねばならなかったわけだ。ということで、五石散を飲んで歩き回る光景から、「散歩」となったということだ。

さて、僕が提唱したいのは「散歩」ではなく、「サンポ」である。少しだけ「ウォーキング」を意識してカタカナにしてみた。ただし、毎日行かなくてもいい。気が向いたら出かければいいのである。今日が寒いのなら、明日でもいい。服は普段着でいいのだが、履物はサンダルや下駄ではなく、石ころにけつまずかないように、ここはひとつウォーキングシューズのような歩きやすいものを用意して欲しい。お金も少々持った方がいい。

では、スタートしてみましょうか。行き先は別にどこでもいい。どちらかというと川べりなどより、街なかがいい。いろいろなお店や名所旧跡などを見ることが出来るからである。オススメしたいコースがある。実は先月、えべっさんの日、ここコクアから堀川戎神社までサンポした。源八橋を渡り、交差点を南へ左折すると、帝国ホテルやOAPが見えてくる。

そのままホテル・OAPなどを通り越したすぐの交差点を西へ渡ると扇町高校があるのだが、その道をひたすらまっすぐ西へ歩いていくと天神橋筋、そして堀川さんに着く。さらに西へ歩いていくとお初天神に通じる。

ところで、大阪で寺町というと谷町六丁目から九丁目、そして天王寺付近なのだが、実はこの扇町高校から西へ天神橋筋までの通りにもお寺が多く、寺町通りといってもいいぐらいである。ぼくは、この静かな通りが好きで、ときどきサンポする。そして、このあたりの寺には歴史上の人物のお墓も多い。

東から順番に、龍海寺には緒方洪庵(おがたこうあん・江戸末期の医師、蘭学者。適塾を開いた)が眠っている。

九品寺(くほんじ)には五井持軒(ごいじけん・江戸中期の儒者)。天徳寺には篠崎三島、小竹(しのざきみしま、しょうちく・それぞれ江戸後期の儒者)。善導寺には山片蟠桃(やまがたばんとう・江戸後期の町人学者)。

成正寺(じょうしょうじ)には大塩平八郎(江戸後期の儒者・大坂町奉行所与力)。

どうです?スゴイでしょ?え?歴史やお寺など全然興味ない?では、そういう方は、天神橋筋商店街をサンポしてください。うまいもんを食べてもよし、すれ違う人たちを観察するのもよし。なにしろ「サンポ」は自由なのです。それに、「ウォーキング」のようにスタスタとひたすら前へ、なーんてかたく考えなくてもいいのです。

あと、サンポするときは出来るだけ身軽がいいでしょう。何も持たず、手ブラで天神橋筋をブラブラと、これがほんまの手ンブラや、などとオヤジギャグも許されます。持ったとしてもカメラと財布ぐらいかな。素敵な風景、おもろい光景に出会ったならカメラで撮ったらいいし、買いたいものがあれば買ったらいいし。ぼくは赤ちょうちんや縄のれんの店には異常に反応してしまう。

「散歩」という漢字をみてみると、「散」は散らばるで、あっちこっちに行くのである。「歩」を分解してみると、「少し」「止まる」となっている。このように、「サンポ」は「ウォーキング」とは違い、ハアハアとシンケンに歩くのではなく、ダラダラとブラブラするだけでいいし、疲れたら電車やバスに乗ってもいいし。とにかく、楽しむことが大事なのです。さあ、あなたも今日から「サンポ」してみては?そして、手に持つのはミネラルウォーターではなく、もちろん缶ビールです。