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その時間、残念ながら金環日食は雲に隠れていたが、午前8時過ぎにはようやく部分日食を見ることができた。
2012.5月撮






昔、ジーパン刑事というのがいた。ご存じ、昔のテレビドラマ「太陽にほえろ!」で松田優作が演じた役であった。刑事のくせにいつでもどこでもジーパン姿だったが、それがサマになっていてカッコよかった。

そして、ここにジーパンランナーというのがいる。ジョギングするのにいつでもどこでもジーパン姿で走り、それがサマになっているかどうかは知らないが、カッコ悪いとは本人は思っていなかった。あっ、これ、ぼくのことです。

でもなぜ、ジーンズなの?スギちゃんじゃあるまいし、とお思いであろう。実はしかるべきトレパンがないのである。まあ、いくら我が家が貧乏だといっても、トレパンくらい買う余裕はある。しかし、そのお金は毎日ビールとカツオに消えていく。それと、買いに行くのがめんどくさい、というのもあり、ついつい毎日「スロージョギングはジーパンで」みたいな、なんだか映画か歌のタイトルのようになってしまっている。

確かにジョギングにジーパンは不似合かもしれない。第一、普通でもジーンズは重いのに汗びっしょりになるとさらに重くなる。ジョギングの合間にストレッチをしようにもぴっちりしていて、おまけに汗でまとわりついて曲げれないし伸ばせない。

ただ、都合がいいこともある。最近、ジョギング人口も増えており、老若男女を問わずみなさん素敵なTシャツやタイツなどのランナーズファッションで身を包んでいる。お金かかってるなあという感じ。ちなみに、ぼくは超スローで走っている。前を歩く人にさえなかなか追いつけない。それなのに、そのような素敵なファッションになった場合、どうなるでしょう。「なんだアイツ、カッコだけいっちょまえで、走るの遅いなあ」だとか、「最初は意気込んでいい服買ったんだろうが、アイツ、はやばやとリタイアだぜ」だとか後ろ指差されないとも限らない。

でも、これがジーパン姿だったら、「あの人は散歩中、ふと、走ってみっか、なーんてゆるゆる走り出したんだろうなあ」だとか「散歩中、用事を思い出して小走りになっているんだろうなあ」だとか「お腹でも痛くなりトイレを探してるんだろうなあ」などと好意的にとってくれる、と思う。

さて、このように、毎日、ジーパン姿でスロージョギングをしているわけだが、何も考えず走っているわけではない。走りながら、このコクア通信のネタをよく考える。少しでも出来の良い文章になるように頭の中で綴ったりする。これも、スロージョギングだからできるのである。顔を歪ますほどのスピードで必死で走っていればこんなことできるわけがない。で、その文章が面白いときなど、走りながらニヤニヤ笑ったりする。すれ違う人は気味悪いに違いない。

あと、ランニング中は必ずポケットラジオをイヤホンで聞く。この時期だと、タイガースの中継だ。だが、野球がないとき、お笑い番組を聞く時もある。それこそネタが面白ければ、「ガハハハ」と声を出して笑ってしまう。親子連れは危険を察して離れていく。誰も近づいてこない。

このように、ジーパンランナーは毎晩愉快に走っていたのだが、ついに、妻にダメだしを食らった。先月、最後の日曜日、妻の前に現れたのはスロージョギングから帰宅した、色褪せて、おまけに首の回りビヨビヨに伸びたTシャツとジーパン姿で、汗にまみれたオッサンだった。

開口一番、彼女は、「みっともないからもーやめて、ダサイわ。キレイなTシャツくらいいくらでもあるでしょ!走るのにジーパンって、どう考えてもおかしいわ!それこそ、いい噂になってるわ。TPOも考えて!押し入れにグレーの短パンあったはずよ。あれにしなさい!」

次の日から、ジーパンランナーは姿を消した。