大阪の下町言葉風に「おかんはアカン」というと「ぼくの母親はドンくさくて何をやらせてもダメだ」となる

が、これをお葬式関係の人がいうと「お棺はアカン」となり「亡くなられた方の棺(ひつぎ)はかたく閉じられて開きませんよ」となる。

今のこの寒い時期だと「悪寒はアカン」で、「寒気(さむけ)がして風邪ひきそうで
こりゃアカン」となり、

冷酒好きの人がいうと「お燗はアカン」となり、

一文字変えると「チカンはアカン」となり、大阪市の痴漢撲滅標語となってしまう。

さて、この「解剖学教室」でとりあげるのはやはり「悪寒はアカン」である。

ウイルス(細菌・黴菌)が体内に入ると熱がでる。なぜか。それは、ウイルスは熱に弱いからである。インフルエンザなどのウイルスが体に入ってくると、体温調節中枢が「こりゃアカン」と発熱の指令を出し、「40度ぐらいまで上げて対抗しよう」と体温調節レベルが40度に設定される。

すると、皮膚血管は収縮し熱放散を減らし、筋の緊張が生じ、立毛筋も収縮し、毛が逆立つ。さむイボができるのはこのためである。ふるえも起こり、交感神経の緊張により熱生産を増大させる。そして、体温が設定温度に達すると、熱平衡が保たれる。

この体温が上昇していくときに外気温が急に下がったかのように不快な寒さを感じるが、これが「悪寒」というわけである。「悪寒はアカン」ではなく「悪寒」がしたということは体温調節中枢が正常に働いたということで喜ばしいことなのである