阪神タイガースの岡田監督引退の日、ナインに胴上げされた彼は涙が止まらなかったらしい。あとでプロ野球ニュースを観たぼくも泣いてしまった。そもそもなぜ涙は出るのか? 目にゴミがはいったときに出る涙と、恋人に振られて流す涙は違うのか? さあ、今回は涙について勉強しましょう。

涙は涙腺(るいせん・上まぶたの奥にある)から分泌され、結膜・角膜の表面を潤し、涙の通路である「涙小管(るいしょうかん・めがしらのあたりにある)、鼻涙管(びるいかん・鼻の中にある)を通って鼻腔(びくう・鼻の穴)へと流れる。

自律神経の働きで涙は分泌されるのだが、その量は1日たった約0.6mlで、このわずかな涙が角膜に栄養を運び、細菌をやっつけるなど目を守る役割をする。涙には「リゾチーム」と呼ばれる酵素が30%含まれており、これが細菌を溶かす効果があり、涙の中には細菌は存在しにくい。

この涙はまばたきのポンプ作用で、目から鼻に抜ける。わんわん泣きすぎると、目から涙があふれ、鼻水も増える。あくびをすると、顔の筋肉が動いて「涙嚢(るいのう)」という涙の袋を押さえつけるので、たまった涙が外へこぼれる。涙の量は歳とともに減ってくるので、「歳をとると涙もろくなる」というのはおかしい。40歳以上だと子供の半分になる。でも、歳をとると、目から鼻に抜ける鼻涙管が細くなり、十分流れなくなり目にあふれてしまうわけである。

目に異物、刺激を感じると涙はでる。冬の寒い日、外に出た瞬間涙がでる。これは冷気が目を刺激したためであり、防御システムが働いたわけである。また、タマネギを切ると涙がでる。これは、硫化アリルが気化し、目や鼻の粘膜を刺激するためである。

では、そういう刺激からの涙と感情が高ぶったときの涙に違いがあるのか。
ある生理学者が実験してみた。感動映画を観てもらった人の涙の成分には高濃度のタンパク質が含まれている、ということだ。一方、タマネギを切った人の涙のタンパク濃度は低かったらしい。従って、感動すると涙が出るのは、感情的緊張により生じた化学物質を体外に流そうとしているのである。

ところで、涙の成分の98.5%は水分である。もちろん、失恋で流す涙も98.5%水分である。ポール・モーリアの「恋はみずいろ」という曲はこのことだったんだなあ。