フラメンコダンスを略してフラダンスとはいわない。フラダンスはハワイのもので、フラメンコは、インド北西部が発祥といわれている放浪の民ジプシーが、スペイン南部アンダルシア地方に土着し伝えていった芸能である。

ちなみに、ジプシーは「エジプトからやってきた人」という意味の「エジプシャン」から「ジプシー」となったらしいが、差別的に使用されているということから最近では、ジプシーとはいわず、ロマとかその単数形のロムとか呼ばれている。

さて、このフラメンコは「歌」、「踊り」、「ギターの伴奏」の三つがワンセットになったもので、従って、フラメンコダンスだけではフラメンコとしては成立しない。

ぼくたちは、ホリの深い顔立ちの女性がバラをくわえて「オーレッ!」と叫ぶ、というのがフラメンコだと思いがちだが、実際はバラなどくわえないらしい。トゲで血だらけになってしまいますしね。

そして、日本では「踊り(ダンス)」がまずクローズアップされるが、本当ははじめに、迫害をうけ、厳しい旅を続けてきたジプシーたちの哀調を帯びた「歌」=‘心の叫び’があって、それに「リズム」「伴奏」などがつき、最後に「踊り」がついてきたのだそうだ。

フラメンコのあの激しい踊りには、数々の困難にあい、虐げられてきた彼らの悲しく苦しい思いが込められているのである。西郷輝彦の「星のフラメンコ」とはちょっと違うようだ。