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このコーナーも久しぶりである。全国の、いや、世界の「うまいもん」をご紹介するのである。ただし、ぼくが食べたことのあるものに限られるので、数はしれてます。
今回は冒頭の写真でもご紹介した「たらいうどん」で、徳島県の土成というところの名物。土成と書いて「どなり」と読む。

珍しい地名である。吉野川を西へ西へ進むと吉野川の支流の宮内川(みやごうちがわ)に着く。その川に沿ってしばらく北上していくと、このうどんを食べさせてくれるところが何軒かある。すべての店が川沿いにあり、水と緑に囲まれた気持ちのいいところである。訪れたのは「一天」という店で一番の人気店。駐車場の看板には「滝のある憩いの名所」と書いてある。

入り口に入ると、まずそこでお姉さんに注文するシステムとなっていて、我々一行(男2人女3人)は、たらいうどん4人前、とり釜飯1人前、山菜釜飯1人前、から揚げ1、タコ天1、ポテトフライ1を注文。もっと注文したかったがお昼ごはんなのでそこは我慢。車で来たのでビールを頼むことができずテンション少し下がる。

1階の川や滝のそばの席に座りたかったのだが、満員らしく3階のお座敷に案内されたが、こちらからの景色もなかなかなものだった。さて、お待ちかね、「たらいうどん」の登場。ぼくと妻は2回目だが娘やいとこたちは初めてなのでとても驚いている。つけだれは特製。徳島の人が「じんぞく」と呼ぶ川魚(正式名称ヨシノカワノボリ、関西ではゴリともいう)からダシをとっていて、しょうがも効いていてうまい。

お湯につかったままの麺も最後まで伸びることなく歯ごたえしっかり。ここからひと山越えれば香川県なので讃岐うどんの文化も入っているのかもしれない。土成町史によると「たらいうどん」の由来は、昔、このあたりでは山林で作業する人夫たちに仕事納めの振る舞いとしてうどんをごちそうするのが通例であった。このとき、大勢の人につぎわけるのがめんどうで茹でた釜から直接食べていた。その後、木製の飯盆(はんぼう)に移して食べるようになった。

昭和6年、時の県知事土井道次が土成町に来た折これを食べ、「たらいのような器にはいったうどんだった」といったことから、いつからか「たらいうどん」と呼ばれるようになった。