今年から始まるこのコーナー。全国、いやいや、全世界のうまいもんを時々ご紹介します。ただ、ぼくが食べたことのある物に限るので、数は知れてます。従ってこのコーナーもすぐ終わります。

ところで、先ほどのチクワの話はちょっと可哀想なので名誉のためにここに記しますが、ちくわの歴史は古い。神功皇后(じんぐうこうごう)が行った、日本書記にもでてくる三韓征伐のおり、九州の小倉に立ち寄ったとき、鉾(ほこ)の先に魚肉をつぶしたものを塗り付け、焼いて食べた。この食べ物が蒲の穂(がまのほ)によく似ているので「蒲穂子」と呼ばれ、それが「蒲鉾(かまぼこ)」に転じた。

ところが、蒲の穂の姿は現在のチクワとそっくりだったらしく、昔「蒲鉾」と呼ばれていたのが、「竹輪」の始まりだったということだ。そして、杉板に貼って作るもの、つまり板カマボコは、江戸時代以降のようだ。

チクワ(竹輪)というのは漢字でもわかるように、魚の練り物を細竹に塗り、焼いたものである。あの穴は竹を抜いたあとである。現在では、大量生産のため、竹の代わりに金属棒が使われている。

徳島県の小松島市の名産に竹ちくわがある。徳島県内のどこのスーパーでもごく普通に竹がついたまま売られている。ぼくが結婚した当時、妻の実家で酒のつまみとして「これ、うまいんじょ」とおかあさんが竹ちくわを出してくれた。生まれて初めての竹ちくわである。

それを、石油ストーブの上の網で焼き、全体にすだちをざーっとおしげもなくかけ、竹の両端を持って、まずは鼻に近づけてみると、皮が焼かれた香ばしい臭いと、すだちの香りが鼻孔から脳天につきささる。食べる前からヨダレがでてしまう。そして、とうもろこしを食べる要領でアグアグと噛み千切ってはビールをゴクゴク。「うー、うまいなあ。おかあさん、もう一本かんまんでー?」「あー、かんまんかんまん」と、ついついぼくも阿波弁でやりとりしてしまい、もう一本食べてしまうほど「ほんま、うまいんじょー」。

ところで、明石海峡大橋を渡ったすぐのところにある、淡路ハイウェイオアシスというドライブインには以前この竹ちくわの自動販売機があった。150円ぐらいだったかなあ、お金を入れるとドタッと、パッケージにはいった竹ちくわがでてきた。最初はカルチャーショックをうけた。今もあるのだろうか。

さて、ちくわの原料であるが、あるスーパーで売られているすべてのちくわをチェックしたがほとんどの商品には「魚肉」としか記載されていない。記載されてたものは数少なく、それには「タラ」とか「イトヨリダイ」、あと出雲名産のちくわだと「飛び魚」と書かれていた。

ここでいう「タラ」とはスケソウダラでマダラではない。スケソウダラの卵巣を塩漬けしたのが「タラコ」であり、九州のほうではこのスケソウダラのことを朝鮮語の影響なのか、「メンタイ」とか「ミンタイ」と呼ぶ。「明太子(めんたいこ)」というのはここからきている。